Certified ScrumMaster (CSM) training course に参加した話

概要

タイトルの通り、CSM training course に参加しました。

この記事では主に以下の情報を未来の自分と興味のある人向けに書きます。

  • CSM や Scrum についての基礎知識・知識への導線
  • CSM training を受けた感想・学び
  • training の内容 (public なものではないので)

背景

私は普段スクラムチームで働いているのですが、今年から Scrum Master (SM) ロールが空いてしまうので私が SM になろうとしたのが背景です。前任の SM の方に CSM が良い training の場になるとおすすめして頂いたのでこのコースを選びました。

ちなみに私自身はこれまで Scrum でいう Developers (Dev) ロールの SWE として働いていて、今後も SM 専属でやりたいというよりはメインでは Dev として働きたいと思っていました。ただ SM と Dev の兼任は非推奨らしく、この辺どうするかな〜というのが一つの悩みです。(なので SM を検討している人はキャリアの舵取り観点でこの辺も一度考えたほうが良いかも...)

CSM とは

CSM とは Odd-e Japan によると

スクラムマスターの認定資格にはいくつか種類がありますが、最もメジャーと言われている認定資格は、Scrum Alliance® の認定スクラムマスター(Certified ScrumMaster®:CSM®)です。

Scrum Alliance® においては、まずこの認定資格を取得し、実践経験を積んだうえで、さらに上位資格へステップアップしていくことになります。

とのことで、Scrum Alliance における Scrum Master のための基礎資格です。より上位の資格としては CSM® → A-CSM® → CSP®-SM があるらしいですが、今回私が受けたのは CSM® 向けの training です。

私が受けた training は日本人唯一の CSP Educator である認定スクラムトレーナー(CST®)の 江端一将(ebacky)san が講師を務めるもので、13:00~19:00 * 5 days 税込み ¥330,000 のものです。Tech会というサイトを経由して参加しました。なお Product Owner (PO) 向けの CSPO や Dev 向けの CSD というものもあり、SM 以外の方向けの training もあります。ちなみに CSM は training に参加すれば全員が資格をもらえるというわけではなく、

本トレーニング中に能力を評価された方は、認定スクラムトレーナー(CST®)によって Scrum Alliance® に登録されます。

残念ながら、本トレーニングは、お金で資格を取得(購入)するための研修ではございません。

Scrum Alliance® に登録されるとオンライン試験の受講資格が与えられ、このオンライン試験に合格すると認定スクラムマスター(CSM®)と認定されます。認定スクラムマスター (CSM®) は、スクラムマスターとして必要なスクラムの基礎を理解していることを示します。

とのことで、ちゃんと training 内で SM としての素養を認められ、かつその後試験に合格しなければ CSM を取得できないです。

Scrum とは

Agile の代表的なフレームワークの一つで、Scrum Guide (日本語 ver) にその内容が書かれています。ここで書かれているのは基本的にはスクラムフレームワークであり、

スクラムフレームワークは意図的に不完全なものであり、スクラムの理論を実現するために必要な部分のみが定義されている。

ここで概要を述べたように、スクラムフレームワークは不変である。スクラムの⼀部だけを導⼊することも可能だが、それはスクラムとは⾔えない。すべてを備えたものがスクラムであり、その他の技法・⽅法論・プラクティスの⼊れ物として機能するものである。

と書かれているように、実際にはプロダクト開発に適用するためフレームワークの上に状況に応じた様々なプラクティスが乗って運用がなされるものだと理解しています。例えば Transparency Inspection Adaptation を pillars としたり Sprint Planning などのイベントの実行はフレームワーク、一方でどのように pillars を活用したり Sprint Planning を実行 (ex. N hours で〇〇という内容をする) するかといった話がプラクティスと理解しています。

Scrum のイメージ図 from https://www.pastoraldog.com

感想

ここからは参加した感想を書いていきます。といっても training の内容にふれるのであまり踏み込んだ話はできないですが...

まず、この training はめちゃくちゃタフでした...。3 日目くらいに一度胃薬を飲んだ日がありました。何がつらいかというと、私の場合は ① それぞれが全く異なる個性を持っていることにより自然に共通認識を持てることを期待できない人々 (年齢・職種・タイプ・経歴・etc...)② 大勢集まった集団において ③ 理解しきれていない Scrum を駆使しつつ ④ CSM を取得するに値するように集団の成果に貢献しないといけない という部分がきつかったです。結局 training 完了後の今でも十分パフォーマンスを出せたと思っていなくて、テストの受験資格を貰えない可能性が十分あると思っています...。

また、学びに関してはかなりありました。Scrum を学びたい人にとって、参加する価値は十分にある training だと断言できます。まず理論に関して、public なガイドや書籍を読んだだけでは知り得ない内容を体験を伴うことで非常に効率よく学ぶことができました。具体的には、フレームワークの正しい解釈とその背景にある考え方を知ることができ、またその重要性自体を学ぶことができました。またフレームワークに則ったプラクティスのデザインについても独学では得られない有効な学びを得られたと思っています。次に実践についても、何が難しくてその場合どのように対処していけば良いかということを 5 days の間常に考え続けており、ピュアにスクラムの実践に向き合い続けることができたためこの形式でしか得られないような貴重な経験を得られたと思います。これらは独学を頑張れば学び得るが難易度が高いので training に参加した方が良い、というよりは独学では学び得ないものと言ってもよいものだと思っていて、この意味で私はある程度 Scrum を真面目にやりたいのであればこの training に参加することをおすすめします。(精神的にはつらいですが...)

学んだこと

これもあまり踏み込んだ内容については書かないですが、一般的な key takeaways だけ残しておきます。どちらかというと training でこう教えられたというより自分がこう解釈したやこう思ったという内容なので、training で実際に学べることとは乖離がある可能性もあります。

  • Scrum Team や Scrum 自体の現状を知るために、Pillars (Transparency Inspection Adaptation) が保てているか、そして Values (Commitment Focus Openness Respect Courage) が育めているかという観点で自問自答すれば改善点が見えてきそう。
  • SM として正しく本質的にあるいは未然に問題解決を行うために、チームやプロジェクトの状態やアイデアのモデル化及びその包括的な解釈が役に立ちそう (ex. チームで次の Quarter にどんなものを作るか考える際にどうやって決めるかを一度モデル化してみて、それで意思決定を行う上でどんな問題が起こるか考えてみる)
  • SM は Scrum がうまくワークするために team だけでなく organization に対してもアプローチする必要がある。
  • (個人の反省として) Scrum とは関係ないけど、集団に対する提言のやり方は結構反省点が多かった。例えばただ可能性を提示するだけでは、特に集団の複雑性が高い場合、ただ議論の複雑度を増していることにしかならない場面は結構ある。

おわりに

この training に参加して、Scrum への理解が飛躍的に増しました。ふと現職に転職して最初 team としての開発能力や適応能力などの完成度が異常に高いことにびっくりしましたが、その一部の要因が Scrum をある程度以上ちゃんと運用できていたからだと思いました。

本文でも書きましたが、Scrum にある程度真面目に取り組みたい方は training への参加を考えても良さそうだと思いました。個人的には多少 Scrum を経験したあとに参加するとより理解が深まる気がします。

また、初めて Scrum をやる人は、(もしかしたらかえって表層だけの理解に陥る原因になってしまうかもしれないですが) 私が読んだこの本は漫画形式で実際に Scrum を適用する話とともに Scrum を学べるので、一読してから参加すると多少イメージが湧きやすくなるかもしれないです。